理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ「富岳NEXT」、「AI for Science」推進で計算可能領域の拡張へ
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理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ「富岳NEXT」、「AI for Science」推進で計算可能領域の拡張へ
AXパーク
2025年10月20日(月曜日)
国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センターは、スーパーコンピュータ「富岳」の後継「富岳NEXT」プロジェクト、科学技術にAIを活用して研究プロセスの加速化と科学研究探索領域の拡大を目指す「AI for Science(AIによる科学)」の推進と基本モデル開発などの取り組みを中心に紹介。AXパークステージでは15日、17日で全8講演を行い、AI for Scienceの最先端の取り組みについて研究者が解説した。
「富岳NEXT」プロジェクト本格始動
今年1月「富岳NEXT」プロジェクトが開始された。同プロジェクトは理化学研究所を中核として、富士通のCPU・システム化技術、NVIDIAのGPU技術とグローバルエコシステムを活用した三者連携で進められる。富士通は富岳から続けて全体システムやCPUの基本設計を担い、今回初めて採用されるGPUの設計にNVIDIA(エヌビディア)が参画する。
開発方針には、日本だけでない国際連携による「Made with Japan」、「富岳」のシステム設計時の想定消費電力を大幅に増やすことなく最大100倍程度のアプリケーション実行性能の向上を目指す「技術革新」、AIによる運用と利用者支援の進化、ソフトウェア環境の継続整備などの「持続性/継続性」を掲げた。
ブースでは「気象・気候」「ものづくり分野」における「富岳NEXT」で期待されるブレイクスルーの例が紹介された。
理化学研究所・計算科学研究推進部の西之園真一氏は「業界だけでなく一般の来場者も多く、この機会に富岳NEXT開発プロジェクトに関心を持ってほしい」と話すほか、富岳の社会実装の研究結果の展示に関して「広く富岳の成果を紹介したい」と語った。
理化学研究所は、分野横断プロジェクト「Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms(TRIP:最先端研究プラットフォーム連携)」を推進している。このTRIP構想は、特定の研究分野だけでは解決が困難な科学的・社会的課題に対し、分野を超えてその解決を図り、理研の持つ各分野の最先端プラットフォーム群を有機的に連携させ、「つなぐ科学」を実現することが狙いだ。
TRIP推進の課題には、スーパーコンピュータ「富岳」とAI開発専用計算機とを⾼度に連携させ、科学研究向け生成AIモデルの開発に必要な計算環境の構築・運用・高度化や、高度な学習・推論を行うための基盤ソフトウェアの開発が挙げられる。そのため、従来のGPUのみでは実現不可能な演算処理の高度化・高速化・省エネ化を実現する新たな計算機原理を確立することで、信頼性の高いAI開発・利活用に繋げることを目指す。
2026年には、科学研究用に最適化したAI for Science開発用スーパーコンピュータの運用が開始され、「富岳」や量子コンピュ-タ等との連携を予定。複雑な科学研究に対応できる科学研究基盤モデルの開発・活用が可能な計算環境を整えることで、日本の科学研究の革新へ貢献する。
8講演 スーパーコンピュータによる『AI for Science』の取り組みを解説
会期中の15日、17日には、AXパークステージにて「スーパーコンピュータによる『AI for Science』の取り組み最前線」と題し全8講演が実施された。
各分野の研究者が登壇し、自動車空力設計、構造設計、創薬、量子化学、デジタル脳構築、AI for Science基盤モデル、地震解析、ゲリラ豪雨予測におけるAI for Scienceの最先端の取り組みを解説した。