対談・インタビュー
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CEATECを語る(Vol.04):メディアから見たこれまでのCEATEC、これからのCEATEC

2022年10月3日(月曜日)
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ゲスト:明 豊 氏(日刊工業新聞社 執行役員 デジタルメディア担当)
聞き手:鹿野 清(CEATECエグゼクティブプロデューサー)

Society 5.0の総合展「CEATEC 2022」は10月1日にオンライン会場がオープン、10月18日に開幕する幕張メッセ会場の会期も間近に迫ってきました。本年は各出展企業の展示はもちろん、新企画「パートナーズパーク」など、見どころが満載です。今回は長きにわたってCEATECの取材に携わり、現在はCEATEC AWARDの審査委員を務める日刊工業新聞社の明豊(あけ・ゆたか)氏をゲストに迎え、CEATEC 2022への期待や情報発信の工夫について、CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清が聞きました。

CEATEC 2022ならではの新しい体験価値を

鹿野 ご多忙の中、ありがとうございます。明さんとのお付き合いは長く、明さんが日刊工業新聞社の記者としてエレクトロニクス業界などを担当されていたときに始まります。今日はメディアの立場から、3年ぶりのリアル開催となるCEATEC 2022への期待などを伺いたいと思います。

 いま考えてみると、会場である幕張メッセに最後に足を運んだのがCEATEC 2019ですから、そうなると今回、実に3年ぶりに幕張メッセに伺うことになります。この間、コロナ禍の中で社会の変化や産業界の構造変化などがありましたが、展示会のあり方も大きく変わり始めたと感じています。

メディアの立場から言うと、前回、リアルで開催した2019年のときのCEATECに戻るのではなく、2022年のCEATECならではの新しい体験価値が生まれたらいいなと願っています。展示会の出展企業ブースは単に展示を見るだけではなく、説明するエンジニアや営業担当者の皆さんとのコミュニケーションにも大きな価値があります。彼らはたくさんの、そしていろいろな情報を持っているからです。そうした方たちに”直接”会って、”直接”話を聞けることは、まさにリアル開催の体験価値になりますよね。

鹿野 2020年、2021年と2年連続でCEATECは完全オンラインで開催しました。特にコンファレンスにおいてオンライン実施のメリットを多く感じましたが、その一方で、リアル開催ならではの思いがけない出会いや熱気のようなワクワク感がほしいといったご意見も多数寄せられました。明さんのおっしゃる通り、3年ぶりのリアル開催への期待を考えると、これまでと同じではなく、進化したCEATECにしなくてはいけないと考えています。

来場者数だけでは測れないリアル展示会の価値

鹿野 明さんは、日刊工業新聞社のデジタルメディア担当として、ご自身も展示会を開催・運営する立場でいらっしゃいます。ようやくさまざまな展示会が動き始めましたが、展示会のあり方は以前とは変わってきていますよね。

 そうですね。いろいろと変わりました。CEATEC 2022もそうですが、リアルとオンラインのハイブリッド展示会という開催形式が定着しつつあるように感じています。リアルとオンラインにはそれぞれの価値があり、両方の利点を生かしながら両立できたらいいと考えています。

今年3月に、一般社団法人日本ロボット工業会と日刊工業新聞社の主催で「2022国際ロボット展」をリアル会場(東京ビッグサイト)とオンライン会場のハイブリッド形式で開催しました。リアルでの開催は2年ぶりとなりましたが、前回開催に比べて来場者数はかなり減りました。来場者の勤務地などのデータを見ると首都圏が中心で、全国各地から東京まで足を運ぶのはかなりハードルが高かったかなという印象です。

ただ、展示会終了後に出展した企業や来場者にヒアリングをしてみると、実はリアル展示会の満足度が高かったことが分かりました。単純に出展者数や来場者数だけでは測れない、リアルの価値を感じておられたのだと思います。

鹿野 もはや出展者数や来場者数だけでは展示会の正しい価値を表現できなくなってきていると思っています。リアル開催ならではの出展者と来場者の新たな出会いもありますよね。国際ロボット展における印象的なエピソードはありましたか。

 出展した機械メーカーの社長さんいわく、オンライン展示会の場合はパートナーとの共創になるような出会いは難しい、と。やはり直接対面することで、次につながるような関係が構築できるとおっしゃっていました。リアル展示会の出展価値として、訴求できることはまだまだたくさんあると思いますね。

鹿野 明さんのおっしゃる通り、主催者ができることはたくさんあると思います。その一つが新たな指標を作り出すことです。具体的には来場者の滞在時間を見える化することを考えています。来場者×滞在時間を数値化し、展示会の新しい評価基準になったら良いなと。皆さんと一緒に議論していきたいと考えています。

CEATECを効果的な情報発信の場として活用するために

鹿野 展示会ではメディアの皆さんをはじめ、さまざまな分野の方々の情報発信が重要です。情報発信も以前とは変わっているのでしょうか。

 展示会はメディアにとって大きな出来事であり、いろいろな取材のきっかけになります。私が記者としてCEATECを担当していた頃は、最新の液晶テレビなどがたくさん出展され、メーカー各社が競争していた時代でした。CEATEC開催初日の朝刊に「世界最大の液晶テレビを発表」といったスクープ記事を載せる醍醐味がありましたね。

当時と違って今はメディアも多様化し、情報を受け取る人たちの受け取り方も変わっています。特に若い人たちは紙で記事を読むことが少なくなり、インターネットの動画サイトやSNSで情報を受け取ることが一般的になっています。

鹿野 動画を活用して自社の製品・サービスを紹介するケースも増えましたね。CEATECには出展企業の広報担当の皆さんも深く関わっていますが、情報発信の仕方などアドバイスをいただけませんか。

 情報を届けたい対象がどんな人たちなのか、情報を届ける手段のパターンも多様化しました。少なくともいえることは、かつてのようにプレスリリースを出して終わり、という時代ではありませんね。

情報発信に関わる広報と事業部などが目標を社内ですり合わせ、どういう手段で、どんなコンテンツを、どんな時間軸で発信していくかを話し合う。そして、CEATECの会期中だけではなく、終了後も継続してフォローしていく。効果的な情報発信のためには、各部署との連携を密にし、計画的かつ継続的に発信していくことが重要だと思います。

鹿野 オンライン開催の時にはメディアの皆さんも、企業の広報担当の皆さんも情報の収集・発信が難しいとおっしゃっていました。今回はオンラインに加えて、幕張メッセの会場もありますので、情報発信の場としてCEATECを積極的に活用していただきたいと思います。

応募・受賞の傾向が注目されるCEATEC AWARD

鹿野 明さんはCEATEC AWARDの審査委員をされています。CEATEC AWARDに応募する製品・サービスや受賞内容などの傾向も以前とは変わっているように思いますが、どのように見ていますか。

 前回のCEATEC AWARD 2021は製品・サービスに加え、社会のプラットフォームとなるようなソリューションの応募が多かったように思います。日本の企業はもともとデバイスに強いので、ときに電池系の応募が多い年があるなど、確かに年によって応募や受賞の傾向は変わりますね。審査委員会では少しずつ審査・選考方法を見直しており、応募、受賞する出展企業によってステータスと感じるCEATEC AWARDになってほしいと思います。

これまで企業を対象に表彰をしてきましたが、例えば今後は、技術者など個人に焦点を当てたAWARDがあってもいいのではないでしょうか。それにより、これまでと違った価値が生まれると考えています。

鹿野 今年のCEATEC AWARDがどんな傾向になるのか注目したいと思います。今日は貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございました。明さんにはこれからもさまざまな立場から応援をよろしくお願いいたします。

PROFILE

ゲスト
明 豊(あけ・ゆたか)
日刊工業新聞社 執行役員 デジタルメディア担当

1991年に日刊工業新聞社入社。記者時代は機械や半導体、自動車、エレクトロニクス業界を長く担当。2015年にスタートしたWebメディア「ニュースイッチ」の立ち上げに携わる。2022年4月から現職。現在、CEATEC AWARD審査委員を務める。

※【編集部より】今回の記事は2022年8月26日にオンラインで動画配信された、CEATEC広報担当者説明会における対談をもとに再構成しました。

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