対談・インタビュー
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CEATECを語る(Vol.01):
中長期的な技術や製品、サービスのトレンドを提示する場

2022年9月14日(水曜日)
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ゲスト:関口 和一 氏(株式会社MM総研 代表取締役所長)
聞き手:鹿野 清(CEATECエグゼクティブプロデューサー)

「CEATEC(シーテック) 2022」が3年ぶりにリアルのイベントとして開催されます(会場:幕張メッセ、会期:10月18日~21日)。併せてコンファレンスなどはオンライン会場で実施(10月1日~31日)。出展者と来場者のより深いコミュニケーションや情報提供が可能なリアル会場と、地理的な制約なくコンファレンスなどに参加できるオンライン会場を組み合わせた初のハイブリッド開催ということで、その意義やCEATECの魅力などについて、国内外のテクノロジー展示会の動向に詳しいMM総研代表取締役所長の関口和一氏とCEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清が語り合いました。

リアルとオンラインの利点を
併せ持つ新しい展示会を体感

鹿野 CEATEC 2022は今年、3年ぶりのリアル開催となります。そして、オンラインを併せたハイブリッド開催となり、主催者としては出展者、来場者の皆さんに新しい形のCEATECを体感していただきたいと考えています。長年、CEATECをご覧いただいている関口さんは何を期待されますか。

関口 はい。リアル、オンラインのそれぞれの特長、利点を活かした展示会になることを期待しています。リアルの展示会の利点の一つは、出展者と来場者のフェース・ツー・フェースのコミュニケーションが可能なことです。そして会場内の展示ブースで新しい気付きを得られるといった思いがけない出会いの楽しみがリアル開催にはあります。

また、オンラインは会場まで足を運びにくい遠方の方が参加しやすいことや、コンファレンスなど会場のキャパシティの制約なく参加できるといった利点があります。いずれにしても、ハイレベルのCEATECになることを願っています。

株式会社MM総研代表取締役所長の関口和一氏

鹿野 今年のコンファレンスはすべてオンラインで配信します。10月1日からオンライン会場をオープンするのは、リアル開催の出展企業にもオンライン上のブースを設けていただき、事前にリアルの出展内容を提示することで、来場者に情報提供してもらうためです。

そして、興味を持った来場者にはリアルの展示会場に足を運んでいただく、これがリアルとオンラインのハイブリッド開催の意義と言えます。これからの展示会の姿を示すひな型になってくれることを期待しています。

関口 やはり展示会はリアルの方が望ましいと思いますね。一方、コンファレンスはいろいろなやり方があります。講演者と聴講者が1対多の聴講型もあるし、講演者が聴講者の質問に答えるQ&A型もある。バーチャルでありながら、双方向でリアルな質疑などが可能なオンラインのコンファレンスになれば意義深いと思います。

3つの大臣賞が授与される
CEATEC AWARD 2022

鹿野 貴重なご意見をありがとうございます。さて、今回でCEATEC AWARDは12回目を迎えます。「総務大臣賞」と「経済産業大臣賞」に加え、今回から「デジタル大臣賞」が授与されます。国内には様々な展示会がありますが、3つの大臣賞がある展示会はほかにはないのではないかと自負しています。

関口さんにはCEATEC AWARDがスタートした2012年から審査委員会の委員、そして今は委員長を務めていただいていますが、CEATEC AWARDに応募する出展者の皆さんに期待することはありますか。

CEATECエグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏

関口 CEATECには国内外からの出展者や来場者だけでなく、様々なメディアも取材に訪れますので、自社の新しい製品やサービス、技術を世界に向けて発信する場になります。そして、出展の傾向も以前とは様変わりしましたね。CEATECの前身、エレクトロニクスショーの時代には家電やパソコンなどハードウエア製品の出展が中心でした。

その後、インターネットが急速に広がり、ハードウエア製品からネットのアプリケーションやサービスなどの出展が増えてきた経緯があります。ハードウエア製品に比べ、こうしたアプリケーションやサービスはリアルの展示会でその良さを見せるのは難しくなっている面もあります。ハードウエア製品だけでなく、ソフトやサービスを開発・提供している出展者にもCEATEC AWARDに応募していただき、アプリケーション、サービスなどの新しい世界を広げてほしいと願っています。

2019年10月開催時の「CEATEC 2019」の会場の様子
2019年10月開催時の「CEATEC 2019」の会場の様子

鹿野 私もCEATEC AWARDの審査委員会に同席させていただいていますが、確かにアプリケーションやサービスなどソリューション関連の応募が増えていきているように思います。今回から「デジタル大臣賞」が新設されますので、例年以上に楽しみです。

また、新たな試みとして、CEATEC AWARDに応募された出展者のみの「見どころ集」をつくります。どの出展者を見学しようかと迷う来場者もいらっしゃると思いますが、「見どころ集」がその参考になってくれるはずです。

関口 確かに、広い会場内でどこを見学すればいいのか迷うこともありますね。CEATEC AWARDの出展者は、自社にとって一押しの製品・サービス・技術などを厳選して応募するわけですから、それが「見どころ集」で紹介されれば、来場者は出展者の一押しを会場内で効率よく見学できそうです。

CEATECは家電見本市から
「Society 5.0の総合展」に進化

鹿野 関口さんは海外の展示会・見本市の動向をよくご存じですが、海外からの出展者や来場者に興味を持ってもらうには、CEATECとしてどうすればいいとお考えですか。

関口 かつて日本企業のモノづくりが盛んなころは、新製品が日本で生まれ、海外に展開されていました。そのため、海外から日本の展示会が注目されていたのです。ところが、最近は「GAFA」など海外のプラットフォーマーと呼ばれる企業が提供するソフトウエアやアプリケーション、サービスが主流となり、日本企業は以前ほどのポジションにはないのが今の現実です。

例えば、ドイツのIFA(国際コンシューマ・エレクトロニクス展)は、かつてはドイツによるドイツのための展示会でした。しかし、英語で記者会見を行うなどした結果、海外のメディアにも取り上げられるようになりました。同じようにCEATECも積極的に英語で情報発信するなど、海外メディアにも注目してもらうためのグローバルな対応が必要でしょう。

鹿野 CEATECはかつての家電見本市から「CPS/IoTの展示会」、そして「Society 5.0の総合展」へと、時代とともに変化してきました。来場を考えている方々に向けて、CEATECの魅力やおすすめのポイントをアドバイスしていただけますか。

関口 海外もそうですが、開催時期によって展示会の性格が異なります。例えば米国ラスベガスで毎年1月に開催されるCESは、その1年の技術的なトレンドを左右すると言われます。また、毎年9月に開催されるドイツのIFAは、年末商戦を見込んだ商談、契約の場として盛り上がります。

それに対して、10月に開催されるこのCEATECは、5年、10年といった中長期的な技術や製品、サービスのトレンドを提示する場ではないでしょうか。来場者がそうしたトレンドを探るのに最適な場であると思います。また、主催者がテーマを決めて、主催者企画を用意することもCEATECの特徴ですね。ぜひ、未来の技術やサービス、社会を理解できるような企画をお願いしたいです。

「共創」を具現化する主催者企画の
「パートナーズパーク」を開設

鹿野 今回は主催者企画として「パートナーズパーク」というエリアを設けます。様々なサービスやプラットフォームを持っている企業が自社のインフラを活用してビジネスを展開するパートナーと一緒になり、ソリューションや技術を紹介していただくものです。

CEATECでは「あらゆる産業・業種の人と技術、情報が集い、共創によって未来を描く」ことを開催趣旨に掲げていますが、パートナーズパークはそのメッセージを具現化するものです。

関口 パートナーと一緒に、皆さんがどんな技術やサービスが提示されるのか、楽しみにしています。

鹿野 CEATECの魅力や期待など、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

PROFILE

<ゲスト>
関口 和一(せきぐち・わいち)
株式会社MM総研 代表取締役所長、CEATEC AWARD 審査委員会 委員長

1959年埼玉県行田市生まれ。1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。1988-1989年フルブライト研究員としてハーバード大学留学。1989年英文日経キャップ。1990-1994年ワシントン支局特派員。産業部電機担当キャップを経て、1996年より編集委員を24年間務め、2000年から15年間、論説委員として主に情報通信分野の社説を執筆した。2019年MM総研代表取締役所長に就任。2022年6月まで日本経済新聞の客員編集委員を務めた。この間、NHK国際放送コメンテーター、東京大学大学院客員教授、法政大学ビジネススクール客員教授などを歴任。また1998年から24年間、日経主催の「世界デジタルサミット」の企画・運営を担う。現在は国際大学GLOCOM客員教授、JPCERT/CC事業評価委員会委員長、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)顧問などを務める。著書に『NTT 2030年世界戦略』『パソコン革命の旗手たち』『情報探索術』(以上日本経済新聞社)などがある。

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