CEATECニュース
産総研 量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q」一般提供開始
量子コンピュータの現在と未来
2025年10月20日(月曜日)
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、2023年設立の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)の取り組みを中心に出展。量子技術が社会課題の解決にどう貢献するか、また業種別ユースケースやプロジェクトを通じて、量子技術が溶け込む未来社会像を紹介した。ブースには「超伝導・中性原子・光」と方式の異なる量子コンピュータ3種のモックアップが展示され注目を集めた。
量子コンピュータ活用促進へ
量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q」一般提供開始
産総研は、産業界での量子コンピュータ活用促進のため「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」を2023年に設立。量子コンピュータと従来のAI技術を融合させた高度な計算技術の社会実装を目指し、ユースケース創出や標準化、デバイス開発などを推進する拠点で、産業界との連携を強化する体制を整備した。
今月14日には、量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q:Quantum-Classical Hybrid Computing Infrastructure」の一般提供が開始された。「ABCI-Q」はGPU搭載のHigh Performance Computing Systemである「システムH」を中核に、3種類の量子コンピュータ(超伝導方式、中性原子方式、光方式)を組み合わせた構成で、一般提供により量子技術の実用化と社会実装を推し進める。
G-QuATに「超伝導・中性原子・光」3方式の量子コンピュータ
ブースに展示された「超伝導・中性原子・光」と方式の異なる量子コンピュータ3種それぞれのモックアップが来場者の注目を集めた。
いずれも産総研に導入され、「超伝導量子コンピュータ」は量子コンピュータの中でも長い研究実績があり、富士通の国内初の商用機がG-QuATで稼働。
導入された超伝導方式は64量子ビット機だが、このシステムを発展させて2026年度中に1000量子ビット、2030年度中に1万量子ビットへの拡大を目指す。実機の大型化を伴うためケーブルの小型化などの技術課題がすでに明確であり、また現状でも参入者が多いことが利点だ。
「中性原子量子コンピュータ」は米国QuEra(クエラ)社が開発。QuEraの本社はボストンだが最新機種(Gemini)が世界に先駆けG-QuATに導入されている。使用する素材や部品の開発に日本企業が強みを持つためだ。
共同研究のハーバード大学の実機において、3000物理量子ビットが実証され計算能力の高さを示している。
「光量子コンピュータ」は、東京大学の古澤・遠藤研究室からスピンアウトして2024年に設立されたスタートアップ企業「OptQC(オプトキューシー)」が開発。
光の波(光パルス)を使うため電力消費を抑え、また時間領域多重(TDM)技術で拡張性と効率性を実現する。
通常の量子コンピュータが量子ビット数を増やすためには物理的に大規模な装置が必要だが、光量子コンピュータはコンポーネント数が少なく、シンプルな設計でコンパクト化が可能だ。
現在は参入者が少ないため、産総研が協力して開発を加速度的に進める狙いがある。
G-QuAT企画室の鈴木貴裕氏は「このプラットフォームを提供することで日本の産業力の向上につながると考えています」と話している。
【出展者情報】
会社名:国立研究開発法人産業技術総合研究所
エリア:General Exhibits(通常出展)
ブース番号:ホール1 1H325
URL:https://www.aist.go.jp/
出展社情報:https://www.ceatec.com/nj/exhibitor_detail_ja?id=1653