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IoT社会のサステナブルな発展のために。東京理科大学 河原研究室

スタートアップ&ユニバーシティ

2023年10月24日(火曜日)
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河原尊之教授の率いる東京理科大学工学部 電気工学科 河原研究室のブースでは全結合型スケーラブルイジングマシンやトランスフォーマのハードウエア実装開発などの成果がデモとともに披露された。

ブース全景

組合せ最適化問題の高速求解を実現『全結合型スケーラブルイジングマシンボード』

イジングマシンボード

遠足のお菓子選びやアルバイトのシフト調整など身近なシーンに始まり、金融ポートフォリオ、物流経路、製造工程など、人間社会のあらゆるシーンに関わる「組合せ最適化問題」。
河原研究室ブースに展示された『全結合型スケーラブルイジングマシンボード』は、その計算に特化したデモボードだ。
従来のコンピュータを使い総当たり法で解いた場合には膨大な計算資源や時間が必要となっていた組合せ最適化問題も、クラウドに頼ることなく効率よく解くことができるという。

イジングマシンをごく大雑把に説明すると、磁石が温度が高いとパワーダウンし、温度を下げるとパワーアップするという自然現象を模擬して計算を行うマシンだ。磁石の中に集まる小さな小さな磁石が高温時はバラバラの方向を向き、温度を下げると同じ方向を向くという性質を表す物理学上のモデル「イジングモデル」の数式が組合せ最適化問題とほぼ等価となることを利用して開発されたという。

今回披露された『全結合型スケーラブルイジングマシンボード』は河原研究室独自開発のボードで、その場で組合せ最適化問題が解けることにより、生産性やセキュリティの向上に寄与すると考えられている。ブースでは東京23区の色分け問題を解くデモが披露された。

"手のひらの上のAI"を目指して『トランスフォーマのFPGA実装』

トランスフォーマFPGA

主に自然言語処理の分野で活用される深層学習モデル「トランスフォーマ」。ChatGPTなどの公開によって、一般消費者が身近に触れる機会もとても多くなった。
IoT社会のサステナブルな発展にはエッジでの人工知能の進化が欠かせないと考える河原研究室が取り組んでいるのが、そのトランスフォーマをFPGA実装するという試みだ。
一般的にディープラーニングの実行には巨大なシステムサイズが必要で、現在私たちがその恩恵に預かる時にはクラウドが活用される場合がほとんどだ。
しかしトランスフォーマをハードウェアとしてエッジデバイスに組み込むことができれば、ネットに繋がらない場所でも、またあえて繋がずに使うことで高いセキュリティを保ったままでも活用することができる。
同研究室ではエッジ応用に向け、さらなる高速化と低電力化が検討されているという。
手のひらの上で完結する工知能が実現し、身近な機器がものすごく賢くなる…そんな未来も近いかもしれない。

スピントロニクスを量子コンピュータハードウェア応用

ブースでは他にも、量子コンピュータの計算結果の読み出しに、スピントロニクス(電子のスピンを直接扱う技術)を活用する研究についても紹介された。
量子コンピュータとスピントロニクスを組み合わせるのは世界に類を見ない試みで、消費電力の低下が期待されているという。

教育と研究の融合を目指す河原研究室

上記のように、物理世界の(アナログ)情報とデジタルビットの情報とを賢くつなぐためのさまざまな検討を重ねている河原研究室は、卒研・修士学生の活動(教育)と国際学会採択レベルの研究との融合を目指しているという。河原尊之教授は「やる気のある、鍛え甲斐のある学生ばかりです」と話してくれた。河原教授の知に導かれ日々切磋琢磨する彼らの成果は、サステナブル社会実現への道を明るく照らす。

出展者情報

会社名:東京理科大学 河原研究室
エリア:スタートアップ&ユニバーシティ
ホール5 ブース番号:S023
URL:https://www.rs.tus.ac.jp/elec/education/laboratory.html
出展者詳細:https://www.ceatec.com/ja/exhibition/detail.html?id=223

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